はじめに 私は少女漫画を読んで育ったと言っても過言ではないほど少女漫画に触れてきた。少女漫画ほど面白くバカバカしいものは中々ないと思っている。そこで少女漫画初心者のための少女漫画概論を熱く語りたいと思う。ちなみにこれは独断と偏見ですが、反論は聞きません。
1.少女漫画の歴史
少女漫画には約40年もの歴史がある。この歴史の中でどのように少女たちの心を鷲掴みする漫画が生まれてきたのか、何が流行したのかについて考えていきたい。(資料1を参照のこと)
2.少女漫画における黄金パターンについて
少女漫画を読みまくっているといくつかの黄金パターンがあることに気づくだろう。そこで、私の分類した黄金パターンを紹介したい。 @物語の始まり、または男女の始めの関係編
A:「誰?」(可愛らしく)
これは少女漫画の王道中の王道「突然の出会い」である。男女が出会い頭ぶつかって「DOKI!」というパターン、落とした定期(この場合名前・写真がないとうまくいかない)を届けてくれるパターン、入学・転校などによって出会う(事前に偶然会うとなお良し)、突然現れた許婚・家庭教師・姉の恋人(この場合年上)というパターンなどが挙げられる。 B:幼なじみ
幼なじみとくっつく場合、「いつもそばにいてくれた」場合と「離れていて年頃になって戻ってきた」場合がある。後者はAのパターンにも準ずるのだが、もともと知り合いという点からBに含む。 C:憧れの人
憧れの人に対する少女の反応として、見ているだけで幸せということが多い。しかし憧れの人からイニシアチブを取られる場合、家族の紹介で親しくなる、委員会などが一緒で親しくなる、など仕事や作業、部活と平行しつつ「もっともっと〜」となる場合が多い。 D:嫌な感じ
少女漫画において「好きな子をいじめる男の子」という設定はよくある話で、そこから恋愛に発展するのもよくある話である。また恋愛感情に気づかない少女が少年をうとましく思う気持ちもある。王道とは言い難いがモテモテジゴロ的な「女の敵!」を嫌っていたが…というパターンもアリのようだ。 E:「アンタ何者?」
特殊状況下における恋愛の始まりである。戦友・王様・悪魔・妖精・芸能人(憧れに含まれる場合もあり)・兄弟・同性(何故か上記4つに含まれる場合も多々あり)・変人などがこれに挙げられる。すったもんだの末、結局ラブラブというパターンが多い。 A恋愛にいたるまでの過程
ヒロインと相手の出会いを経て恋愛にいたる過程を説明する。これはあくまでヒロインが好きになる男性との関係であり、横恋慕してくる男性との距離ではないことを断っておきたい。 A:相思相愛
この場合は双方気持ちを隠していたがどちらかが告白→ラブラブというパターン、最初からラブラブだが波乱万丈というパターン、双方憎からず思っていて段々燃え上がるパターンなどがある。初めからラブラブというのは波乱や心の機微を求める少女にとってあまり魅力的でなく、人気がない。 B:男の片思い
この場合信じられないほど男がオクテ、もしくは信じられないほど女が鈍感、もしくは全く興味がない(相手を知らない)場合が多い。オクテな男性が段々と熱烈な行動にうつり、それにほだされ…というのがパターンである。男の片思いは少女たちの自尊心や優越感をくすぐるらしく大変人気がある。
C:女の片思い
この場合男がメチャクチャモテる、もしくはモテるまではいかないがみんなの人気者というのが前提条件である。なぜなら少女は誰からも羨ましがられないような男に片思いするほど心が広くはないのである。そういう男性が主人公にだけ心を開き、主人公とラブラブになることによって少女は大きな満足感を得る。古典的だが未だに人気のあるパターンである。 D:双方興味薄
どちらも嫌いあってはいないが別に好きでもない、というパターンはあまり人気が無い。なぜなら物語が発展しないからだ。イベントでどちらかが「DOKI!!」となって燃え上がるしか方法はない。それよりはどちらかが好意を持っていたほうが話の展開としては楽なようだ。 E:嫌いあっていたが…
嫌いあっていたがいつのまにか、というのは波乱・破倫を求める少女に人気である。Dのパターンよりも大きなイベントにより、急接近というのが多いパターンである。しかも好きになるのはほぼ男性が先である。嫌いな男性(容姿はいい)に言い寄られて始めは嫌がっていたが乱暴な中に優しさがあり…という感じにいつの間にか主人公も好きになるようである。このタイプは今考えるとストーカーとしか思えないものも多々ある。 B周りの人間関係について
A:主人公モテモテ
主人公モテモテは少女漫画の王道である。主人公は可愛らしいが「女性」的ではなく、周りの少女たちとそう変わらないが「一生懸命で心優しい」タイプが多い。しかも自分がモテモテであると気づいていない。あちこちの男が彼女に「DOKI!!」となるが、彼女は好きな男しか見ておらず、そのために一生懸命なのである。他の少女に嫌われる場合(『悪魔の花嫁』など)が多いが、スポコン系(『エースをねらえ!』など)では人気者の場合が多い。 B:相手モテモテ
相手モテモテの場合も主人公のタイプは同じである。多くはそれに「恥ずかしがりやさん」というオプションがつく。モテモテ男は天真爛漫で文武両道というタイプが多い(『ガラスの仮面』初期など)。二人は惹かれあうが「何であたしなんか…」という主人公の葛藤がストーリーの主軸となるようだ。また主人公は他の少女に嫌われる場合が多い。 C:どっちもモテモテ
どっちもモテモテはAとBをくっつけたようなものである。しかし人間関係がビバヒル(肉体関係ナシ)か主人公争奪戦になり、泥沼になりがちである(『王家の紋章』など)。周りの少女たちは主人公を嫌う(あたりまえだ)場合が多い。 C少女漫画における禁忌について
1970年代から80年代の少女漫画の禁忌について説明したい。少女漫画においてタブーとされていたものに「二人以上の異性(もしくは同性)とつきあう」、「激しい性描写」、「貧乏」、「主人公もしくは相手がブサイク」が挙げられる。どれも当時の少女漫画には合わないものだったのだろう。
3.なぜ少女たちにホモがうけるか
1970年代後半以降、何故か少女漫画においてホモを題材にした漫画が多い(現在も多いらしいがそのへんは守備範囲ではないので割愛させていただく)。何故多いかについてかなり長い間考えた結果、いくつかの少女側の需要をみつけた。
第一にインモラルである。これは破倫・波乱を求める少女の心を鷲掴みするだろう。その上ホモというだけで障害が多いので意味もなく燃え上がれると思われる。しかももともとおかしな設定なので状況設定が現実離れしていても全然おかしくない。また男女の恋愛には何かしら打算が付きまとうが、ホモは純愛であるような錯覚に陥るのだろう。あまり男性に接したことが無い少女は「汚い」男女間の恋愛よりも「メシも食わなきゃトイレも行かない」美少年同士の恋愛のほうが美しく感じるのではないだろうか。また女性には妊娠・結婚という世俗の臭いがどうしてもつきまとうが、少年にはその心配もない。しかしどっちにしろ美少年同士というよりは少年的な少女同士の恋愛と思って読んだほうが無難な気がする。
4.考察 少女漫画とは何かと考えた結果、これは少女の心を満たすオアシスであるとしかいいようにないと思われる。このオアシスには驚くほど多彩な動植物が存在し、その一つ一つが少女の心を鷲掴みする。恋愛はもちろん誰にも言えない悩み、憧れ、喜び、ありえないシチュエーション、才能、倒錯や波乱、倫理の倒壊など、少女の欲望や妄想のヤミ鍋である。このヤミ鍋は少女たちの形にならない心の機微を代弁し、方向性を示してきたのだろう。23にもなって往時の少女漫画を読むとありえない設定の噴き出してしまうが、リアルタイムで読んでいた人々にとっては「恋愛ってステキ…」となったのだろう。そしてこんな漫画を読んで大きくなった少女が結婚し、子供を産むと「こんなはずじゃなかった」となるはずだ。そうならないためにも少女漫画にハマりそうなときには「これは妄想の世界」と思いながら読むべきであろう。
さいごに ここまで少女漫画について考えてきたが、少女漫画は幻想の産物であります。しかしそれにハマっている少女たちはたくさんいて、ワタクシめもその一人であります。それを理解しているのに「最近の少女漫画はどうなっているのか」と悩むワタクシは立派な中毒患者でございます。それでも声を大にして言いたいのは「少女漫画がなくては人生の半分は退屈だ」ということでございます。
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