最新更新日
03/06/23

ジブリ実習T
著者:新津ゆうた


一時間目 ナウシカ概論

1. はじめに

 宮崎駿率いるスタジオジブリを知らない者はいないであろう。その中でも「風の谷のナウシカ」は宮崎駿の名を不動のものとした作品であり、以前根強い人気を誇っている。新潟の友人T.S某は未だ何かにつけて大ババ様の真似をするウザイ男であるし、私の長男はナウシカについて語ったら二時間はしゃべり続ける男である。そこで今回は「風の谷のナウシカ」の世界観、人物を紹介すると共にその魅力に迫りたいと思う。


2. ナウシカの世界

(1) 原作版と映画版

 まず原作版と映画版の位置づけを説明する。原作版1981年に宮崎駿氏が発表したイメージボードが発端となったマンガであり、17年の歳月を経て1994年に一応の完結をみた。1984年に原作2巻の途中までを踏襲し公開したのが映画版である。このレジュメでは主に原作版を中心として話を進めていく。

(2) ナウシカの世界

 ナウシカの舞台となるのは産業文明から1000年後のセラミック時代終期であり、産業文明の終末期に起こった「火の七日間」によって世界は汚染されており、不毛の大地には「腐海」と呼ばれる新しい生態系が広がっている。腐海の中は瘴気が満ちており、人々はマスク無しには生きられない。
 人々の生活は産業文明の遺構を利用したもの(ペジテ:エンジンの発掘 セム市:宇宙船のセラミックの加工)、腐海を利用したもの(森の人蟲使い)などがある。

(3) 諸国の状況と人物相関

 ナウシカの物語中には様々な国、人物が登場する。(板書有り)
トルメキア王国(風の谷より南西に位置する軍事国家。土鬼に戦争をしかけるも技術水準は決して高く無く、粘菌が発生していなければ確実に土鬼に滅ぼされていたであろう。首都はトラス。)
土鬼諸侯国( トルメキアより南東に位置する宗教国家。数多の小国が集まって存在する複合国家なため必ずしも一枚岩ではないがトルメキアに対する憎しみは皆同じ様である。聖都シュワにある『墓所』と呼ばれる黒い建造物の中に表れる碑文を解読し旧世界の秘術を少なからず有している。)

(4) 腐海と浄化システム

 ナウシカ6〜7巻で明かになることであるが、腐海、蟲、巨神兵、庭、シュワの墓所は産業文明から計画された再生のプログラムの一環である(ナウシカは結局全て壊してしまうが)。


3. 考察

 「風の谷のナウシカ」を見ると自然と人間の共存というテーマを根底に見ることができる。特に構図が簡単になった映画版では<腐海の焼却=クシャナ>:<腐海と共存=ナウシカ>というある意味ベタな二項対立を見ることが出来る。これは他のジブリ作品にも見出すことが出来る。例えば「天空の城ラピュタ」ではなぜラピュタが滅んだかという答えとして「やはり人は地に足をつけていなければ生きていけない」と答えを出している。「もののけ姫」ではほとんどナウシカと構図は同じである。
 まあ、17年かかって原作版は一応の終末を迎えたわけだが、本人は映画版、原作版どちらのインタビューにも「おわり」と書かずに「つづく」としたかったという趣旨の話を宮崎駿は話しておりまだまだ本人には書き足りないことがあるのだろう。これ以上ナウシカが続いても訳が分からなくなるような気がするが…。


4.「ナウシカ」の批判的検討

 壮大なテーマを扱ったナウシカであるが、どうも私には腑に落ちない部分が存在する。それはペジテアスベルである。彼は2巻36頁でナウシカに抱きつかれて、ナウシカがアスベルの包帯をずっとしている(2巻94貢)ことを聞き(4巻48,49貢)まんざらではなかったはずである。
 しかし、1巻後半で現れた土鬼の娘ケチャが僧正を失った悲しみに暮れている際、肩に手を回す(3巻89貢)、マニ族においていかれたケチャの肩に手をかけようとしている(3巻44貢)などとやや浮気な部分が見られる。
 極めつけはラストシーン(7巻223貢)である。

おいおいアスベル。それでいいのかよ。



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