1.調査地概要
今回の調査地である県立A高校は東北地方F県に存在する県立の男子校である。A高校のあるA市は歴史のある地方都市である。A高校は旧制中学時代を含めると100年以上の歴史を有する高校で、A地方における進学校であるためそこにはA地方全体から生徒が集まっている。そのため通学が困難で下宿している生徒もいる。彼らの多くは「○○村の神童」といった位置付けで、郷土の期待を一身に背負って入学してくる。一学年は320人でのべ960人が○虎隊の逸話で有名な鶴○城近くの学び舎で学んでいる。進学校とはいっても入学試験もさほど厳しくなく、他人よりちょっと勉強できれば容易に入学できる。生徒の中には中学生の頃から塾に通っていた者も多く、家庭はそれなりに裕福な家が多い。
2.A高生の一生
(1)一年生
はじめは同じ中学校に通っていたもの同士で固まって行動しているがその後そのグループは解体されていく。中学生時代は優等生だった者が多く、クラスの6割以上の人間が中学時代に生徒会役員または学級委員長を経験している。多くの人間が中学生時代は優等生だったため「自分は天才」と思っているが1回目のテストでそのうぬぼれが打ち砕かれ、多くの生徒が勉強しなくなって部活動にのめりこんでいく。部活になじめなかった人間は概論Tで取り上げられたように「オタク」「不良」などに分化されていく。
(2)二年生
多くの人間が部活動に勤しみ、一部の優等生以外はほとんど勉強しなくなる。A高校では二年生になると文系と理系にクラスが分けられる。共学の学校では文系がハーレム化したりするが、A高校には文系だろうが理系だろうが男しかいないので関係がない。文系の人間にしてみれば人数が少し減り「教室が広くなったなぁ」程度のものである。
ここで生徒の中の階層について言及したい。
・不良
人数としては10%以下。不良といっても所詮は田舎の不良なのでトイレでタバコを吸う程度のものである。この階層にいるものの多くが校則で規定されている髪型(色)から逸脱したヘアースタイルをとる。多くは近くの女子高に彼女がいたりするが一部に不良になりきれないものもいる。この階層の人間の多くが部活動には所属していない。
・ 普通
人数としては70〜75%。この生徒は文字通り普通の生徒である。普通の生徒のうち女子高と交流のある部活(テニス部など)に所属する生徒の中には彼女のいるものもいるが多くは校内にいる数少ない女性たちに心躍らせている。一部は中学校時代のつてを使って近隣の女子高生と合コンしたりする。
・ オタク
人数としては20%以下。概論Tの調査地より少ないのはここが地方都市で情報が少ないことがあげられる。なので潜在的オタクの数はもっと多いと考えられる。彼らの多くはオタク系の部(後述)に属するか同好の士とともに行動している。概論Tの調査地のように小グループに分かれないのも情報が少ないからだと思われる。種類としてはアニメ・ゲーム(もちろんギャルゲー・パソゲー・エロゲー含む)・競馬・鉄道・ハロプロ・歴史などがある。私の友人のアニメオタクは月に一度は電車で1時間半かけてK市にあるアニ○イト(アニメ系の商品が充実したショップ)まで買出しに行っていた。また、声優オタクの友人は自宅にアンテナを張り巡らせ、全国各地で放送されるそっち系のラジオを傍受していた。
(3)三年生
この頃になると皆それなりに勉強し始める。「女なんか勉強の邪魔じゃ」と言って自分自身を納得させる人間も多く、大学にいったらどうにかなると思っている人間も多い。
3.年中行事
(1)新入生オリエンテーション
合格した生徒は合格発表後に書類を渡される。その中には入学に必要な書類とともに参考書が入っており、合格早々問題集を解かされることになる。A高校の入学前にはオリエンテーションが3日間ある。そこでは先ほど出された問題集の提出や学力テストが実施されたり、部活動紹介などが行われる。
そこで行われる一大イベントが応援団による「校歌練習」である。新入生は体育館に並ばせられ、校歌を歌わせられる。新入生には予めカセットテープが配られており、これを覚えてくることになっているのだが誰も覚えてきてはいない。その様子を見た応援団による「指導」が行われる。歌っていないことがわかると団長が取り巻きに「応援団の諸君!どんどん切ってくれ」と指示を出す。そうすると取り巻きは「切れ切れー!」という掛け声の下体育館にいる一年生の半分を座らせ、残り半分に歌わせる。この「切る」行為を続けていき、最終的に10人程度で歌わせる。また、明らかに歌っていない奴や服装が校則にあっていないような「トッポイ」生徒は前に出されて歌わせられる。この「指導」の結果一年生は震え上がり、家に帰って必死に歌詞を暗記するのである。ただA高校には校歌や応援歌を合わせて6つもあるので新入生は四苦八苦する。しかも、このとき覚えた歌の多くがその後の3年間で歌われることがない。ここでの返事はもちろん「はい」ではなく「押忍」である。
(2)入学式(4月)
参加するのは新入生と保護者のみである。A高校では『論語』の「学而(がくじ)」がキーワード(生徒会は「学而会」・文化祭は「学而祭」)なのでそれについての話と「勉強しろ」というテイストの挨拶がなされる。
(3)中○浜強歩大会(「競歩」ではなく)4月28日
学校をスタートして20〜30kmをひたすら歩く行事である。陸上部にとってはマラソン大会化する。途中に登る「背あぶり山」には登山道らしいものはなく、雪が残っていたりすると人が転げ落ちてきたりする。筆者が生徒だった頃は登りきるまでに3人ほど落ちてきた。なおこの行事はどんなに悪天候でも行われ、中止されたことがない。
(4)体育祭(7月)
体育祭とはいってもバレーボール・卓球・サッカー・バスケットボールといった球技がクラス対抗で行われる。この体育祭は学年も取っ払われて行われているため、上級生からは脅迫めいたヤジが飛ばされる。優勝商品は「ポ○リスウェット3ケース」。
(5)学而祭(9月)
文化祭のことである。これは三年に一度しか行われない。ここでは各クラスから一名ずつ代表が出て女装するという「ミス学而」なるコンテストが行われる。このイベントには男子校に幻想を抱いた女子高生が大挙して訪れる。中にはかなりグッとくる女装をする生徒がおり、女子高生の妄想をさらに膨らませる結果となる。この学而祭には近隣の女子高から数多くの生徒が訪れるため、一般生徒は色めき立つが当然何も起らず、「久しぶりに同年代の女子と話したなぁ」と感慨にふけるのが関の山である。
(6)マラソン大会(10月:創立記念日の前日)
学校から自転車で30分ほどのところにある河川敷に集合させられ、12kmのマラソンをさせられる。レース後にはPTAの作った「学而(がくじ)汁(いも煮=東北地方の郷土料理。豚汁に近い)」が振舞われる。クラス全員の順位を集計して上位のチームには「ポ○リスウェット3ケース」が贈られる。先述した強歩大会とこのマラソン大会の頃になると体育の時間はマラソンしかしなくなる。
(6)12月24・25日
多くの生徒は冬休みの補習から帰る道すがら町に流れるクリスマスソングを聴いてクリスマスの存在を感じる。彼女のいない一般生徒は学校の行き帰りに手をつなぎながら歩いて帰る高校生カップルの間に「チャリンチャリン」と鳴らしながら自転車で割って入ったりする。教室では「日本人なら花祭りの日を祝うべきだ」などというトークが交わされるがその頃には雪も降っているので身も心も寒くなる。
(7)2月14日
上に同じ。朝学校に来て下駄箱や机の中を確かめるようなウキウキ感すらない。机の中にチョコレートを入れるという笑えないいたずらをする生徒もいる。
(8)卒業式
受験期に行われるので出席しない生徒も多い。多くの生徒が「今日で女っけのない生活はおさらばだ」と思っている。
5.部活動について
A高校では生徒は基本的に部活動に所属することが義務付けられている。「不良」や「普通」クラスのガリ勉などは「地歴部」「英語部」といった活動実体のない部活に所属する。これらの部に所属する生徒は学校全体の3割近くに及ぶ。
部活動の中には「オタク」が集う部活動が存在する。筆者ははじめ柔道部に入ったがそこはアニメ部化していて、あるアニメを見て号泣する先輩を見てひいたことがある。また、電気部には数多くのオタク(アニメ)が集っており、そこにはアキバ系の書籍が数多く置かれている。
体育会系、文化系の部活を問わず部室にはアイドルのポスターが貼られており、エ○本やア○ルトビデオが置かれている。
5.授業その他について
男子校には女子はいない。なので授業中の教師の発言はエロパワー全開である。女子生徒の前では決して言わないような言葉の数々が日常的に飛び出す。
男子校には着替えを見られる心配がないため更衣室はない。プールの授業の際は外で着替えていた。体育が2・3クラス重なったりするとプールはえもいわれぬ光景になる。
男子校は汚いと思われがちだが意外に(あくまでも意外に)きれいである。女子高出身のある女教師によると「うちの女子高の方が汚かった」そうだ。
6.女子について
男子校に女子はいない。教師は多くがA校のOBであるため当然ほとんど男ばかりである。そのため校内で接する女性は保健の先生と図書館司書、それに女教師のみである。
A高校には「○高(A高校の略称)病」なる病気があった。それは「校内にいる女性を誰彼かまわず好きになってしまう」というものであった。私は実際に同級生が「○○(教師名)を落とす」と言っていたのを聞いてへこんだ。
7.調査地にまつわる噂
A高校の卒業生はA地方の経済や行政の中枢に数多くおり、ここの卒業生であるというだけで簡単に就職が決まるとされている。また地元では優秀な高校であると認知とされており、特に老人達の間では孫がA高校に入学すると鼻高々だそうである。筆者も通学中の汽車(一部電気化されず)の中で見ず知らずのおばあちゃんにお菓子をもらい、励まされた経験がある。このことに関連した話としてA高校生が万引きや自転車泥棒をしても警察に突き出されないという噂がまことしやかにささやかれていた。
入学前に「陸上部はホモの巣窟らしい」という噂があったが実際に入学してみるとそんなことは全然なかったと声を大にして言いたい。 が、吹奏楽部にはいたらしい・・・。