平成17年4月10日は清明祭であった。清明祭を沖縄ではシーミーといい、墓参りが行なわれる。その際、墓の前で食事をするのだが、県外の人から見れば異様な光景のようで、県外出身の友人によく指摘された。今回は、シーミーについて考えてみたい。なお、シーミーの様子などは、私の経験に基づいてのものであることをご了解いただきたい。
シーミーは、沖縄地方で清明節に行われる祖先供養の行事である。家や門中ごとに墓参りを行ない、祖先を供養する。
中国から伝わったといわれるが、それがいつの頃かははっきりしない。首里士族を中心に普及し、やがて地方農村へも伝わっていったが、それほど定着せずに士族層だけに留まっている地域もみられた。特に宮古、八重山ではシーミーを行なうのは士族だけで、それ以外の人々はジュウルクニチー(正月十六日)の方を盛大に行なう。沖縄本島北部でもジュウルクニチーの方が盛大なようだ。このように沖縄地方とはいうが全般的に行われているわけではない。
現在では、清明節が平日になる場合、入り日に近い休日に行なう家が多いようだ。いつ行なうかは、シーミーに参加する親戚が相談して決める。その際、何時ごろ墓に行くか、墓の掃除をどうするか、料理はどう用意するかなどの相談も一緒になされるが、大抵の場合、例えば墓掃除は普段墓を管理しているA家が、それ以外は必要なものを用意する…という風に何となく役割分担のようなものが決まっているのではないかと思う。
墓の掃除は、事前に掃除し当日は料理だけを持って行くパターンと、当日の朝から先に行って掃除する者と料理を用意する者とに分かれるパターンとに二分される。墓の掃除は大変なので、親戚内の男手が担当することが多いようだ。
シーミー料理は、重箱に4段1組で詰める。中身は盆などのときと変わらないが、家によって若干の違いが見られる。一般的には2箱に餅を5から7個ずつの縦3列で詰め、残りの2箱には魚の天ぷら、昆布、カステラかまぼこ、三枚肉、揚げ豆腐、ごぼうなどを、品数を奇数にして詰める。この他、菓子が入った重箱などを用意するところもある。重箱の用意には、担当になっている家がつくる、親戚が集まってつくる、持ち寄りなどのパターンが挙げられる。家によっては「どうせ餅は食べないんだから…」と、餅ではなく海苔巻きを入れるところもあるそうで、重箱の中身はまさに家ごとの特色が表れるといえよう。スーパーの惣菜などに重箱を注文することも多く、また、重箱だけではなく食事用にオードブルを持参することもあるようである。
当日は、昼頃から墓に出かける。朝に墓の掃除に出る場合は、ここで先に行っている人達と合流することになる。墓前に重箱、酒、お茶などを供え、人数分の線香をあげる。ウートートーしたあとに灰が落ちるのを待って直会する。しかし実際は「蚊が多い」、「暑い」などの理由で墓では食事をせず、家ですることも多い。
シーミーは行楽的な要素がとても強いと言われる。確かにその通りである。しかしシーミーは、普段会わない親戚と話をする機会であり、また、自分の家の墓がどこにあるのかを知る機会でもある。また、「シーミーは人数が多いほうがいい」、「正月はともかくシーミーには参加するべきだ」などの考えを持っている人もおり、単なる行楽とはいえない。
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